匂いの帝王
いろいろな意味で面白い
本書は匂いについて標準的な説とは異なる説を唱えたルカ・トゥリンという学者が研究を進め
ていく過程を経時的に追っていくドキュメンタリーのような話です。
彼の破天荒な知的探求や匂いに関するさまざまな話、思い入れなどがありますが、中でも面
白いのが、標準的な説を唱える学者たちとの対決の中でいかに彼が辛酸をなめさせられたかの
話で、論文を読んでもないのに批判して、批判するなら論文を読んでくれというと読む時間が
ないの一点ばりで電話を切る学者、ネイチャーに一年も論文を保留されたあげくリジェクトさ
れる話、一方ではBBCの番組や学会での活躍の克明な描写など、読んでて面白かったです。
全く、標準説の科学者はろくでもないやつばっかりだな、というお話なわけですが、実は冷静
に読めばわかるように、そして、著者も気づいている通り、トゥリンという学者も実はその上
をいく存在です。自説に不都合な論文はろくに読みもせず、棚にしまいずっと封印してたとか
、企業と組んで自説の予測が完全に外れたときには、それを素直に受け入れず、各地に電話
でどなりこんでまわったり、実験の手続きはいい加減、匂いに関する自分が気に入らない説
(とくに匂いと性を結びつける話)は、もう標準説の学者以上に相手にもしないという姿勢。
と常軌を逸しています。
著者の言っている通り、反対意見の人の言い分をまるで載せず、主にトゥリンの言い分どお
り載せてこれなんだから、あまり話は鵜呑みにしないでおくのが賢明だなとは思いました。
ほか、同じ分野の人が物理や化学にうとく、トゥリンの話にまるでついていけない一方、彼が
その知識と匂いへの愛着を生かして創造的な説を唱えたという点が興味深いなと思いました。
2004年度ノーベル生理学・医学賞
2004年度のノーベル医学・生理学賞が嗅覚の解明を行った
米コロンビア大のリチャード・アクセル教授(58)と
米フレッドハッチンソンがん研究所のリンダ・B・バック博士(57)
に送られることが発表されました.
授賞理由は「におい受容体と嗅覚システムの発見」
この本で紹介されているルカ・トゥリンとは別の人ですが,今まで解明されてこなかった嗅覚の仕組みを
解明した研究者にノーベル賞が送られたというのは面白いですね.
本自体の評価としては,かなり読むのに疲れます.
冗長な記述だがつまらないことはない
匂いについてちょっと調べていたので読みました。
しかし、匂いの学術的成果を読みとろうとすると、
電子メールのやりとりなどがなんとも冗長な記述で
読んでいて疲れます。
しかし、研究者の研究生活ドキュメントとして読めば
それはそれで面白く、論文に発表するときには殆ど
カットされてしまう苦労話、発見の瞬間、大学職員
や論文審査員との確執などは面白い。
天才肌の大学の先生など、そういえばこんな人もいた
かなあ、など思い当たることもあります。
結局匂いの研究ははかどっていない。匂いの「原色」
が見つからないせいだが、10種くらいのにおいで
代用するという研究もでており、これから研究が進む
と思い、匂いに注目しています。